■2011年10月

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■Sem Tirar Nem PôR(引きも足しもせず)日本発売に寄せて(後編)


出来上がりはとてもシンプルに聞こえるこのアルバムですが、
完成までの道のりはそれほど簡単なものではありませんでした。


この作品のプロデュースは、昔からレオの作品を手がけ、レオも絶大な信頼を寄せるSuso Saiz(スーソ・サイス)氏です。いつも革新的な発想をするスーソさんらしい提案で、初めは、ライヴ・ハウスなどで演奏するときと同じように、ぶっ通しで何曲も歌い続ける、というやり方で録音されました。
.....なんと大胆なアイデア!でも、ライヴと同じように、といっても、お客さんがいない前ではどうしても抑えた演奏になってしまうのがレオは気に入らなかったようです。それに、好きなだけスタジオを使えるわけもありません。納得のいく録音をするにはこのやり方では時間が足りなくなる...心配になったレオが代わりに提案したのが、1曲につき3回と決めて録音する、というものでした。この新しい方法で伸び伸びと演奏ができたようで、順調に作業は続き、録音された数は30曲!にもなるほどでした。

しかし、その後、録音された沢山のトラックを聴き返す段になって、レオの中では根本的な1つの迷いが生じたようでした。ほとばしるような勢いでここまで進めてきたものの、それを客観的に捉えるもう1人の慎重な自分がいて、彼自身の中でせめぎあっていたのだと思います。このようなシンプルな作品をリリースして本当に良いのか...。これまでに発表したアルバムでは周到に練り込んだ音作りをしてきたレオにしてみれば、とても自然な迷いだったと思いますが、スタジオに飛び込んで行ったときの自分を思い起こし、前向きに進む気持ちを取り戻していた様子が伺えました。

このアルバムが無事にリリースされ、
ここ日本でも発売に至ったことを、今、本当に喜ばしく思います。

今回、ブラジル音楽工房サンバタウンさんが輸入元となり国内発売されるにあたっては、筆者も制作に全面支援した、歌詞対訳冊子がついています。レオ自身が書いた、また、他アーティストが提供した歌詞は、それぞれに個性的で味わいある世界を醸し出しています。音と言葉、ぜひ一緒に楽しんで頂けたら嬉しく思います。

どうかたくさんの方にこのアルバムを聴いて頂けますように、
心からそう願っています。

(posted by marikinha)
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■Sem Tirar Nem PôR(引きも足しもせず)日本発売に寄せて(前編)


鮮かに立ちのぼる音。
微かに震えながら、
静寂に溶けてゆく音。
荒ぶりかすれる音。
甘く切なく感情を包み込む音。.....

このアルバムはいっさいの
音響的加工をあえて行わず、
ヴォーカルとアコースティック・ギターだけで、スタジオ・ライヴ録音されました。
正にアルバム名どおりに、Sem Tirar Nem Pôr...何も加えず、何も削っていない、直球勝負の演奏。そのことが、レオの作る「歌」そのものの魅力を鋭く際立たせています。息遣いや弦の擦れる音も生々しく、すぐ眼の前で弾き語られているような親密感を伴いながら、ミニマルな音の要素とは相反する、豊かで繊細な彼の世界を描き出しています。

例えば、過去のアルバムと聴き比べてみると、同じ曲でも、単に演奏やアレンジが違うからではなく、歌が違った表情を見せていることに気づき、ハッとさせられます。レオは、声とギター、それだけで、それぞれの歌の奥深いところにある細やかな情感を浮かび上がらせ、聴き手へダイレクトに伝えているのです。

ギターから生まれるアクセントの効いた多彩なリズムと、抑揚やメリハリ、歌詞の音韻を自由奔放に拾うことで声(身体)から生まれるリズム。そして、洗練されたメロディーラインと独特のハーモニー感覚。それらが絶妙に融合するレオの演奏は決して同じ表現に留まることはなく、時を経るごとに進化し、彼自身と共に変わっています。その意味では、このアルバムは、あの日あの時のレオが確かに刻印されたもの、といえるでしょう。

* * *

2009年7月下旬、日本での初めてのソロ・ライヴ・ツアーを終えて満足気なレオは、「次のアルバムはギター1本で作るよ」という言葉を残して帰国していきました。それからわずか2~3週間の内に、「もう準備は終えたから、明日からスタジオに入るんだ」との近況を聞いた時にはとても驚きました。レオはある意味で日本人以上に細やかな人ですが、やはり基本的には、“ラテン系”スペイン在住のブラジル人。のんびりしたところがありますので、特に時差の違う外国への長旅から戻った後は、普段であれば無理はせず、まだ疲れを癒している頃です。それが、もう録音を始めるというのですから!

レオは後になって、日本から帰国したばかりの頃の自分を「日本で、沢山の人と知り合えて、いろいろときれいな所へ行けて、嬉しい気持ちでいっぱいだった」と振り返っていました。今にして思えば、日本にいる間に感じたもの、得たエネルギーをそのまますぐにスタジオに持ち込みたかったのだろう、と思います。
帰国直後、怒涛の勢いでMySpace上に連載された、「日本滞在日記」(原題De Vuelta a Madrid、スペイン語)でも彼の高揚した気分が伝わってきます。関連記事はこちら

 ~ 後編へ続く ~

(posted by marikinha)

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